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2008年12月28日

バレンボイム音楽論

ダニエル・バレンボイム、ピアニストにして指揮者。
音楽と人間との関わりを徹底的に論じている。バレンボイム自身の社会的な活動もその音楽家としての哲学から発生していることもよく分かる。

途中、スピノザの「エチカ」からの引用が多い。(昔読んだがちんぷんかんぷんだった)
彼が思索を深めていく上で、重要なヒントを与えてくれたのが、この著作であるそうだが、バレンボイムの語り口から還元して考えると、スピノザの考えもより具体的に理解することができる。

音楽と人生との関わりについてヒントを得たい人向けの本であると思う。

音楽表現について、かなり根本から「何故?」に対してバレンボイム自身の回答を与えているので、音楽を実践するうえでのヒントもたくさん書いてある。

ちょっと、とっつきにくいが、得られるものも多い本であった。


2008年08月20日

生きた音楽表現へのアプローチ(保科洋著)

音楽表現の方法というものは運動に基づいている。
「ここは力を溜めていって・・・このフレーズの頂点で開放・・・」というようなことをレッスンでいうものである。こう考えると、音楽表現というのはエネルギーの移り変わりで理論化できそうなものではあったが、なかなかこれが難しい。
やはり実際のレッスンの場だと口伝に近い形で、教師がいろいろなパターンにおいて普遍的な表現を教えていかなければ鳴らないのが現実である。

・・・と考えているころに出会った本。かれこれ10年近く前になるかなあ。

スペインで学んだ西洋音楽の表現法のリアルな姿がこの本に理論化されていて驚いたものだ。漠然とケーススタディとして持っていた表現のルールが、理論化できることにびっくりしたのだ。

図などを用いて説明しているが、ちょっと分かりにくいかもしれない。でも、音楽表現を自分で見つけたい人には一読をお勧めする。いくつかフレーズの歌わせかたのコツを知っている人なら、「ああ、そういうことだったのか!」とすっきりするはずである。

音楽表現の理論付けに是非どうぞ。

2008年08月17日

「音楽の基礎」(芥川 也寸志著)

ちょっと前まで絶版だった本。
内容は新書としてはハード。読み応えあり。
しかし作曲家としての「きらり」と光る感性も文章のなかに見ることができる。
速度と表情の項には、「アレグレット」を記号ととらえず、原語の感性からニュアンスを感じること…というようなことが書いてあり、ある意味でとても「現代的」。
30年以上前に書かれた本であるとは思えない「正しさ」に満ちている。

前に述べたが、全体としてハード&内容充実であるが、興味のある項から読むべし。役に立ちます。基礎って大事って思えます。

2007年09月19日

汎音楽論集(高柳昌行著)

高柳氏はジャズの分野で活躍。
日本のフリージャズの開祖とも言える人である。

帯の文句「糟も残らぬ音楽等、論外である」・・・ハードな言葉。
内容は様々な雑誌などに寄稿したものを集めたものである。

ガボール・サボを音楽家として高く評価している。オリジナリティの観点からである。

個人的にはローリンド・アルメイダの来日公演への批評が面白かった。
とてもひどい演奏だったらしい。ところどころにクラシックギタリストへの深い造詣が伺えるところもあり、博学であったのだなと感心した。フラメンコも聞いているし、ショーロなどもすでに研究していたそうだ。

こりゃあ、凄い人が日本にもいたものであると、ひたすら感心して読み進めた。


2007年02月01日

音楽の生存価(福井一著)

音楽療法の虚像と実像・・・
モーツァルト効果は本当か?・・・etc

なんだか、かつてあった「噂の真相」音楽版みたいな本ですね。

音友から出ているので、内容なしっかりしています。

ある意味、音楽への夢をぶち壊す内容だが、科学的な研究をもとに書かれている。
もちろん、科学的に実証された効能なども述べてあるので、フェアな本ではある。

どちらにしても、漠然と「音楽っていいわ~」と思っている人は読んでみるといい。
モーツァルト効果・・・とか『癒し』とかブームに踊らされつつも、『俺はハードロックのほうが安心するな~』という方もいたのではないかと思う。『何度聴いてもクラシックはだるい・・・もしかして俺は異常?』と心配するなかれ・・・。そういう人も充分に正常。音楽嫌いも正常。そういう意味で読むと安心できるかも。

結局、自分の好きな音楽を聴いていれば、いい・・・ということなのかも。
モーツァルトがどうしても駄目な人は駄目だしね。

ある意味で、とってもタイムリーな本。某テレビ番組の嘘科学に似たものが、音楽の世界にも一杯あるのが分かりますよ。

2007年01月30日

民族楽器大博物館(若林忠宏)

とにかく見ているだけで楽しい。
世界のギター族がカラー写真で見れるだけでも嬉しい。
「ほー、クワトロってこんな感じなんだ!」とか「ブズーキって素敵!」と思ってしまう。

文庫版なのも嬉しい。保存にも、持ち歩き(暇つぶし用?)に最適。

弦楽器だけでなく、打楽器も笛関係もいっぱい載ってます。

2007年01月20日

日本レコード文化史(倉田喜弘)

日本のレコード文化についての本。
豊富な資料で日本にレコード文化がどのように根付いていったかを分析。

2006年12月15日

音楽に生きる(中野雄 編著)

中野雄 編著・・・とある。ゲストとともに音楽について語る、という趣向の本。
中野雄氏の「モーツァルト~天才の秘密」(文春文庫)をともに読むと、面白い。
ヴァイオリニストの天満敦子との対談は、モーツァルト研究をもとに話題を広げていっている。

物書きというのは、ひとつのネタをあちらこちらへと広げていくようなところがある。

ある人物を研究していくと、他の人にも同じ「理論」が適用できることが多いということである。

そういう意味でやはりひとりの著者の本を数冊読んでいくと、いろいろと「創作」について学ぶべきことが多い。

2006年12月05日

若いピアニストへの手紙(ジャン・ファシナ)

音楽の技術、表現について「ごくあたりまえ」のことを、「ごくあたりまえ」に書くことはとても難しいのである。
それをファシナ氏はやってしまった。

スタッカート、レガートについての簡潔にして、的を得た定義は「あ!」と思う。
普段自分では感覚で分かっていることを、言葉で説明されると感動してしまう。

だから、この本は実際に演奏活動に関わっている人が読むと頭がすっきりする。

とにかく、簡潔。だが、奥が深い。
音楽をする上でもっとも大切は基本を再認識させてくれる本である。

2006年12月02日

美しい演奏の科学(藤原義章)

藤原義章氏による旧著「新しいアンサンブル入門」は、音楽の新しい形の理論書であった。
実際に名演奏家と呼ばれる人のリズムの取り方、表現法を理論化し、誰でも実践できる形へと文章化した隠れた名著である。

旧著の内容をリニューアルしたものが、この本。
より読みやすく、まとまった内容になっている。

自然リズムについての説明は必読。西洋音楽のリズムのプロポーションがよく理解できます。

2006年11月27日

アンビエント・ドライヴァー(細野晴臣)

細野晴臣の著作はほとんど購入している。
説教くさい人生論を聞くのは辛い・・・それが人というものである。
細野氏にはまったくそれがない。

辛いない。でも正しい。

マイペースで音楽活動を続けている細野氏。
でも、YMOで音楽シーンのトップを疾走した細野氏。

いろいろな面がある音楽家であり、人間である。
こういう人にしか語れない哲学がある。

しかし、結論を急がないその姿には何故か感銘を受ける。
考え方を模索する大切さ、そしてそこから得られるもののほうが結論を出すことから得られるものよりも大きいということを再認識。

くだらない哲学(宗教)ノウハウ本を買うより、これ一冊。
賢い人なら、得られるものは無限にある本。

もちろん細野氏の音楽が好きな人は、読むと、彼の作品の意味がよーくわかる。

2006年11月04日

ナディア・ブーランジェとの対話(ブルノー・モンサンジャン著)

ナディア・ブーランジェは「20世紀最大の音楽教育者」といわれる。
ソルフェージュ、和声、解釈、分析などのレッスンを行い、様々な優秀な弟子を輩出。

著者モンサンジャンが、彼女と対話を行い、まとめたもの。

ブーランジェの音楽に対する考え方を引き出していく。
徹底的に正統派の教育家。
ある意味で“知識の詰め込み”・・・ともいえるやり方であるが、楽曲を徹底的に分析すれば「バッハのフーガを週に1曲暗譜するなんて誰にでもできる!」という。

つまり、音楽家としての基礎技術(和声、ソルフェージュ、分析などなど)を身につけることが、なによりも大事、というポリシーのもとに教育をおこなってきた人物。

この本には、その偉大なる音楽教育家の至言が詰まっている。

問題は一点。訳が固い(部分的には誤訳もありそう・・・)ので、読みにくい。
残念ながら、原文を想像しながら読んだ。
最初読んだのは大学生の頃。
指示語が足りなかったりするようなところを補足して読んだ。
(生意気にも鉛筆で書き足してあったりする)

今でもたまに読み返す。
そうすると意外に「あ、わかった!」というところも増える。

そういう意味でも何度読み返しても面白い本。(個人的に)
逆にいえば、読み返さなければ得るところは少ない本ともいえる。

2006年10月29日

オンチは楽器がうまくなる(向谷実著)

カシオペアのキーボーディスト向谷実氏の著作。
音楽上達のコツをエッセイ風に書いている。

やわらかい文体、話し言葉で書いてあるので、わかりやすい。

「演奏姿勢をまねすると上手くなる!」という項では、ザ・フーのピート・タウンシェンドなどを例にとり、ピッキングの角度、腕の使い方などを“姿勢(ギターの構え方)をまねすること”によって近いニュアンスを出すことができる、と語る。

まあ、参考になる話が多い。

そして、なによりもカシオペアのバンド苦労話が読み応えあり。

個人的に、あまりカシオペアは好きではないが、こういう話を読むと、聴きなおしてみてもいいかな?と思う。

2006年10月26日

「芸術力」の磨きかた(PHP新書)

いわずとしれた、林望の本。
なんだか、この人の守備範囲は広い。
でも、読みたびに、なんとなくすらっと読めてしまって、それでいて、それなりに役に立つ。
・・・おそらく、それでいいのだろうね。

芸術とは何か?それを日常の中で見つけていこうというのが、この本の趣旨。
芸術は、生活のなかにとりいれるべきものである!という主張である。

それをアクティブに「遊び」の感覚で取り入れる方法、学びの方法も伝授している。

私が面白かったのは、何故かリンボウ先生の趣味のひとつがクラシックギターだということ。
まあ、楽器習得には基礎練習が大事!という例として取り上げているのですが、ギター習得には音階が重要!と述べているわけです。

ただし、ギターの醍醐味が現在のラミレス(リンボウ先生愛用)から学べるとは思いませんが。
(ラミレス信者の方には申し訳ないが・・・)


この本は、趣味を探している人、また習い事をしていて煮詰まってしまった人にお勧め。
ある意味、ちょっと偏りがありますが、リンボウ先生の意見には「ぶれ」がありません。
まあ、間違ったことは言っていませんし。

芸術関連ビギナーにお勧めの本。

2006年10月08日

「あがり」を克服する(カトー・ハヴァシュ著)

生徒を教えているという仕事なので、発表会のたびに、「あがり」とは何か?について考える。
ということで、この本はとても参考になり、今でも折にふれて読み返す。

結構付箋がいっぱい張ってあって、「自分でも何度も読んだな~」と思ってしまう一冊。

ヴァイオリン奏者のために書かれた本ですが、指の使い方、難所克服のための方法などは、ギターと共通の部分も多く(肉体面でも、精神面でも)参考になります。

「あがり」という面だけでなく、たとえば「速いパッセージが弾けないという恐れ」という章では、技術面、精神面から具体的な練習法を書いていて、そのままギターなどでも応用できます。

あくまでも「演奏家」が揚がらないための方法を書いている点が好感が持てる本です。
決して心理学者が書いた「理論書」に終わっていないところがミソ。

また、生徒と教師のあり方(依存と自立)についても書いているのも、面白い。
「社会的地位もある大人の生徒が子供がえりしてしまう・・・」というくだりもあって、普段レッスンしている自分からすると、「ある、ある!」と思わず思ってしまうことも書いてある。

「練習の工夫」という章も参考になります。

とりあえず、楽器を練習している人なら持っていて損がない本。教えている人にもお勧め。

2006年10月05日

これで納得!よくわかる音楽用語のはなし

こういう本を待っていました!
これで、生徒ひとりひとりに、「とにかく音楽用語は語学辞書をひけ!」という手間が省けます。
(全員買ってくれるといいな~)

実際、この本で、音楽用語の微妙なニュアンスの違いもつかめました。

morendoとsmorzandoの違い・・・とかが、よく理解できる。
日常生活での使い方などでニュアンスが分かるようになっている点もgood!です。

豊富な例文で、そのニュアンスの違いが分かりました・・・。

「andante」を『歩くような速さで』と説明していた自分が恥ずかしい・・・。
(この本を読めば、ちょっと違うニュアンスであると分かります)

音楽を学ぶ人は全員、買いましょう。
(イタリア人以外は)

2006年10月04日

モーツァルト 天才の秘密(文春新書)

帯に天才伝説を覆す画期的評伝・・・とある。
確かに、読んでみると、モーツァルトが、天才ではないように思った。
普通に苦労し、勉強し、いろいろなものを吸収し、それを外へ出す。
そして環境・・・さまざまなものが、モーツァルトを「天才」音楽家へと育てたのだと、分かる。

緻密な時代考証と、現代の脳科学などの知識をもとに、どのようにこの音楽家が成長していったか、研究している。

中野雄氏の著作には、「音楽家とはどのようにしてなるのか?」という視点がいつもある。
そういう意味で、音楽家になりたい人、音楽を勉強している人、全員に役に立つ「真理」が含まれている。

真理、というと堅苦しいのだけれど、まあ、コツというかね。
音楽を聴く、音楽を演奏する、そして、音楽を続ける・・・そのためのコツが随所に散りばめられている。

2006年09月22日

ウィーン・フィル 音と響きの秘密(文春新書)

中野雄氏の著書。
おおまかに言ってしまえば、オーケストラと指揮者の関係をウィーン・フィルという世界的オーケストラの発展をもとに解明していく本であるといえる。

オーケストラと指揮者の関係って何?とか、指揮者が何故「音楽家」として認められるの?(ただ棒振っているだけなのに・・・)といって疑問をもっている人にお勧め。

また、オーケストラメンバーがひとりひとり、優秀なソロ奏者でもあるので、そのエピソードも興味深い。

やはり小澤征爾が語られれば、その氏である斉藤秀雄の指導法も語られねばならない。
・・・というふうに、内容はいろいろな軸に膨らんでいく。

日本人と西洋音楽との関わりも触れられているし、ヨーロッパとアメリカの文化の差も語られる。
そういう意味では、とても内容が濃い。

クラシック音楽全般を知りたい人に、とてもお勧め。
この本を軸にして、オケを聞き比べしても良いし、指揮者に興味をもってCDを買ってみてもよいだろう。

2006年09月21日

音楽ライターが、書けなかった話(新潮新書)

神舘和典(コダテ カズノリ)氏の本。
音楽ライターとして多くのミュージシャンの記事を書いてきた筆者の「裏ストーリー」的な内容。
各音楽家の、性格、人間性をクローズアップしている。
読みやすい。電車のなかでさらっと読めた。

扱っている音楽家は、ジャズ、ポピュラー、ロック、Jポップと幅広い。
個人的に、ジャズミュージシャンの項が面白く読めた。

ジョンスコフィールドとマイク・スターンの違い。かたや「紳士」、かたや「アメリカン」・・・。実際に自宅を訪ねていった際のエピソードで、それがよく理解できる。

デヴィット・サンボーンの苦悩・・・を扱った部分も、「ああ、スターも大変だな」と思う。

これらの内容が、筆者が実際に本人に会い、話をしたりした中で語られているから、読みやすいのである。

最後のほうに、筆者本人が語る「音楽ライターという商売」という文章がある。これがまたよろしい。
結局、自分の好きなことを仕事にしたほうがいいのだ。
この点は、私も同意見。

2006年09月16日

近所がうるさい!(橋本典久)

騒音問題の本である。
近隣の住民の騒音などで悩んでいる人は必読。
それに、われわれ音楽家も必読。意外に知られていない「騒音」の実態・・・。

騒音の正体とはなにか?・・・音楽家であれば毎日練習するだろうから、このあたりの知識を持っておいたほうがいいだろう。

具体的な事例、裁判の結果、騒音の科学的分析、ついでに文化史的な捉え方もしている。
新書版で読みやすい。音楽やる人はとりあえず読んで、自分の出す音に意識的になりましょうね。

2006年09月13日

インプロヴィゼーション(デレク・ベイリー)

ギタリスト、というよりは即興演奏家として名高いデレク・ベイリー氏の著書。
様々な即興演奏の分野との対話から、得られたものを文章にしている。

インド音楽、教会オルガン音楽、フラメンコ、ジャズなどの『即興』について深く掘り下げている。
結局は音楽とは何か?作曲とは何か?ということを考える作業になってしまう。
楽器とそれを操る身体、そして身体をコントロールする精神・・・これらの関係から、どのような音楽が生まれるのか?ということを自由に考えている本。

大学生の頃、この本を読んで、「ああ、音楽って、いろいろ考えた上で、てきとーにやっていいのね」と思ったが、現在プロになって、おりおり思考の檻から出られないことがたまにある。そんなときは徹底的に考える。いろいろな本を読んだり、考えを整理したり。
結局は、楽器を弾いていると、その思考の檻から脱出できることが多いのである。結局、ぐちゃぐちゃ考えるよりも、実際の音から学ぶものは多い。
もちろん逆も多い。

このあたりの、楽器(音)、身体、精神、のバランスがコントロールできたときに、真の音楽家となれるのかもしれない・・・そんなことを考えてしまう本です。


2006年09月10日

音楽の霊性(ピーター・バスティアン)

読み物として面白い。1994年発行だから、かなり古い本だが、ずっと本屋には売っている。
隠れたベストセラーなのかもしれない。
最近も新装版を見かけた。

音楽のピッチ、リズムの「習得」過程を、自分の経験をもとに記述している。

この本の斬新だった点は「メンタル・ラーニング」を取り上げている点である。
絶対に早く弾けない!という心理を逆手にとり、『絶対に弾ける!』と深層心理に働きかける練習過程を経ることで、技巧的困難を克服する方法である。

現在ちょっとしたブームとなっている(いないか?)『インナーゲーム』理論にも近い考え方である。

そういう意味でも、ちょろちょろっと見返すたびに発見がある本。確かにロングセラーなのが分かる。

2006年09月05日

松本隆対談集 『KAZEMACHI CAFE』

作詞家松本隆の対談集。
なんど読んでも、なにか見つかる本。
やはり、松本隆氏はプロ中のプロです。

大瀧氏との対談は凄い!
大滝詠一氏の歌唱法の秘伝公開である。歌詞をすべてローマ字化し、子音と母音を「明暗」で処理していった・・・というくだりは、独特である。どのミュージシャンも独自の歌唱システムを採用しているとは思うが、ここまで考えられるあたり、やはり大滝氏は知性派である。
それを引き出せる松本氏もやはり、知性派。

対談相手によっては、松本氏のプロ作詞家としての厳しい姿も垣間見える。
音楽の仕事とは?ということを知りたい人にもお勧めの本。
やはり、ミュージシャンはみな、『職人』ですね。

2006年09月02日

細野晴臣インタヴュー

細野サウンドの謎・・・と帯に書いてあるが、実は音楽リズム指南書として読むといいかもしれません。
細野氏ほどリズムにこだわるミュージシャンも少ないかもしれません。
「1拍子」理論も説明されています。

YMO後、なんだかわからないことをやっていた時期のことも説明されています。
音楽と自分の対話の作業というのは、実に辛い・・・しかし快感・・・であることが行間から伝わってきます。

あと、この本は、昔出版されていましたが絶版が長く続いていました。これが文庫版で入手できるというのがうれしい!

すべて対話形式なので、読みやすいのも魅力です。
民族音楽入門にも向いています。

2006年08月31日

エスクァイア日本版「発見、クラシック音楽」

ネイガウス氏の書籍を先日紹介したが、偶然にも雑誌「エスクァイア9月号」にロシアピアニズムの特集が載っていた。
確かに、ロシアのピアニストには、共通した音があると思う。それを解明しようとする試みは、ある意味で無謀だが、しっかりとした取材でなんとなくそのルーツが見えてくる。
やはり、雑誌もあなどれない。700円で、この内容&「特集テーマ」は、買い、である。

古楽についての特集も組まれている。重鎮アーノンクールは当然、そしてジョルディ・サバールも当然登場・・・。
面白いのが、サバール・グループの撥弦楽器担当のロルフ・リズレヴァントが登場していることだ!。
ホプキンソン・スミスの弟子という正統派&もともとジャズ奏者出身・・・という変り種。
インタヴューは必読。ジャズ奏者としてプロの仕事をして、夜中にリュートを弾いていた・・・という若き日の回想・・・バロック音楽とジャズの関連・・・
以上のことが、これほどの実力派奏者が語ると、真実味を帯びる。

古楽器=貴族的・・・という短絡的な見方をすると失敗する。
どちらかというと、民族音楽と共通のものが多く、いわばポピュラー音楽ともいえる。
そんなこともなんとなく理解できる、サヴァール氏のありがたいインタビューもある。

2006年08月30日

世界の愛唱歌

意外にメロディーは知っていても、ちゃんとした詞を知らなかったり・・・
ドナ・ドナとか、結構オリジナル詞は“ブルーズ”ですね。
楽譜付で、見開き右ページは解説。これがまた読みやすく、寝る前とか暇つぶしに良い。
ちょっと、トリビアっぽいネタも多いですね。

あ、もちろん、ちゃんと全部読んでも、唄ってもよろしいです。

2006年08月28日

世界の音を訪ねる(久保田麻琴)

ワールド・ミュージックとその正体が『なんとなく』分かる本。
なんとなく、と書いたのは悪い意味ではない。

音楽の根源を筆者なりのフットワークで探っていく姿が記録されている。
それは、決して懐古主義でも、マニア的でもなく、あくまでもミュージシャンとしてのスタンスでの記録だから、『なんとなく』理解できるのだと思う。

第1部モロッコ編に書いてあるグナワについての記述がその好例。
グルーブとは何か?について、それを感じる方法を文章化してある。
実際やってみると、ほんとうに「感じることができる」のである。グルーブが。
この部分だけでも読んでみることがお勧め。

研究家的な理論と例証ではなく、久保田氏がミュージシャンとしての実践を通じて考えたことを文章化している。
『なんとなく』というのは、そういうことです。

2006年08月26日

ピアノ演奏芸術(ネイガウス)

モスクワ音楽院在籍40年、名教授ネイガウスの名著。
ピアニストです。
私がバルセロナでアレックス・ガロベーに師事していたとき、彼が薦めてくれた本がこれ、でした。
それで、さっそく本屋で「スペイン語版」を購入。なんとか苦労して読みましたが・・・。
あんまり分かりませんでした。

ということで、帰国してから日本語版が改訳されて発売されていました。
読み直しても、いまいち分かりづらい。何回が読み直して、いろいろと頭の中で想像しながら解釈・・・すると「名著」である理由がわかります。

特に「第二章 リズムについて」は必読。音楽の本質はすべてリズムにある、ということが分かります。具体的な例が多いので、すぐに演奏に結びつくことが多く書かれています。

2006年08月25日

スペイン音楽のたのしみ

いわずとしれたスペイン音楽入門書・・・であるが、最近読んでいる人いるんであろうか?
なんだかんだいって、とっても読みやすい。
アントニオ・ホセ、アンドレス・セゴビアなども登場。そういう意味でギター弾きなら読むべし。

2006年08月23日

マンドリン物語

ギターとマンドリンの歴史を平行して学ぶと学ぶべきところは多い。
共通している部分もあるし、まるで違う発展をした部分もある。

お互いに学ぶべきところが多いのである。
この本の著者の有賀敏文氏は現役の作曲家、マンドリン奏者。私も一緒に演奏する機会が多い人です。
資料をしっかりと収集。わかりやすく読みやすい。
マンドリン関係者はもちろん、ギター弾きにも読むことを薦めます。

2006年08月19日

伴奏者の発言

名伴奏者(ピアノ)であるジェラルド・ムーア氏の本。
日常の練習・・・という項で、「一にも二にも自分自身をよく聞く事」が大事だと唱える。
至極まっとう。付け加えて「これを学ぶことが一番むづかしい」という。
ああ、ギター弾きにも当てはまる。
というより、全音楽家に当てはまる。

初見心得、なども書いてある。初見に挑む前に、必ずテンポをとること!と述べる。
ああ、これも「あたりまえ」なのだが、なかなかこれが無意識にできるようになるのには時間がかかりますね。

・・・という具合に、毎回読むたびに反省・・・勉強になる本。
伴奏者以外にも、充分役立ちますね。

(でも、薄い本の割りに、高価である。何故?)

2006年07月31日

KAWADE夢ムック「大瀧詠一」

読み通す本と読み通さない本、つまりぱらぱらとめくる本がある。
この本は私にとって後者。
大瀧&ナイアガラはもうかれこれ20年以上のお付き合い。

この本も多数の大瀧ファン&マニア、研究家(?)の文章で構成されていて、気楽に読んでも、へヴィーに読んでも面白く、ためになる。
まあ、もともと「ためになる」なんていったら、大瀧大先生から叱られそうだけれど・・・。

ロンバケ「雨のウェンズデイ」の歌詞が聞き取りにくい・・・(「壊れかけた和弦の」)から発展していく、細馬氏の文章が読み応えあり。
伝説のヘッドフォンコンサートについての分析も興味深い。
そういう意味で考えると、大瀧氏は「現代作曲家」の分類におかしくはない。(ナイアガラーの戯言)

2006年07月23日

ビル・エヴァンス「ジャズ・ピアニストの肖像」

久々に読み直した。
なぜか、本業と関係ない本を、本業が手一杯のときに限って、読みたくなってしまうものですね。

駆け出しの頃のエバンスが、「音楽を仕事にしていくためにはどうすればいいか?」と考え、その結論が「音楽に全身全霊をかけてとりくむこと!」というくだりに、そういうものだよねと共感。

2006年04月27日

「ミケランジェリ ある天才との綱渡り」(アルファベータ)

天才ピアニスト、ミケランジェリ・・・についての本。
大学時代、ミケランジェリのドビュッシー、良く聴きました。
「なんか変な音(倍音)が聴こえるな~」と思って。

そんな彼のことについて書いた本がこれ。
153ページあたりの、アンドレ・ゲルトラー教授のヴァイオリンメソッドの話が参考になった。
1960年代に活躍した名教授だそうで、この先生のクラスに入ると、その生徒は数ヶ月間それまでのレパートリーを弾くことを許されなかったそうである。

その数ヶ月間、基礎的な右手、左手の訓練のみに集中させる。

その後、フォームが安定した時点で、やっと曲だそうな。
遠回りだけど、正しい教育法だと思う。

まったく、ミケランジェリとは関係ない部分が印象に残った本でした。

「音楽観想」(みすずライブラリー)

ルバートに関する記述や、ダイナミクスについての説明、などなど実に参考になる。
固い文体(訳の問題?)のため、とっつきにくいが、勉強になる本。

118ページあたりの「筋肉群の交替」
120ページの「呼吸は全生命の始めと終わり」
142ページの「8分の6拍子」の説明の“しかた”
165ページの「不協和と協和の関係」
などなど、硬質だが、印象深い定義がたくさんあり、音楽家には参考になる。

2006年04月20日

「指揮法&ウィンナー・ワルツ」(パンセ・ア・ラ・ミュージック)

指揮法についての基礎訓練書。
指揮の基本と、それが産み出すリズムの基本が理解できる。
ウィンナワルツの基本もしっかりと解説。

いままで読んだ指揮法の本でもっともわかりやすく、実践的な本だった。

音楽キーワード辞典(春秋社)

大学時代にやたら読んだ本。
音楽を理解しよう!と思って「楽典」を買ってもなんだか分かりにくかった。
で、この本に出会って「あ!意外と理論って面白いかも・・・」と思った。

文字通り「キーワード辞典」なので、興味のあるところから読んでいくとよい。
もちろん、通読しても面白い。読みやすい。

2006年04月10日

「ピアノを弾く身体」(春秋社)

岡田暁生氏の著作。
ピアノ奏者の身体感覚について書いた本だが、「難しいパッセージは難しそうに弾く!」というのがヴァーチュオーソの特徴!という結論などは、結構衝撃的だ。
現在の奏者がどうしてつまらなく聴こえるのか?というヒントがもらえる本である。

もちろんそれだけでなく、音楽家なら思い当たることがたくさん書いてある。シューマンとショパンのアルペジオの違いによる身体感覚の変化&リズムの違いなども面白かった。

2006年04月03日

「BRIO4月号」~ドナルド・フェイゲンインタビュー

「BRIO」という雑誌を初購入。
普段こんなお洒落雑誌は買わない。でも年代的に割合しっくりくる雑誌ではあった。

べつにお洒落に興味があるわけでもなく、
購入の目的はドナルド・フェイゲンのインタビュー。

ナイトフライ、カマキリアド、そして新作モーフ・ザ・キャットが3部作であること・・
少年期、ジャズにはまり、姉のピアノで真似事をしていたら、いつの間にかジャズが弾けるようになっていたこと・・・
など、フェイゲンファンなら「ほほ~」と思う内容。

2006年03月26日

「シャンドール ピアノ教本」(春秋社)

先の記事「西洋音楽史」の著者、岡田 暁生氏の名前をどっかで見たな~とおもったら、私の愛読書である「シャンドール ピアノ教本」の監訳者でした。
これは、ほんとうにお役立ち本です。
楽器奏法とは何か?を研究している人にはお勧め。
身体と技術との関連についての本としても面白いと思う。

「西洋音楽史」(中公新書)

岡田 暁生氏の著作。
音楽史というと、名前の羅列!みたいな雰囲気があるけれど、この本は読みやすい!
音楽史の流れを一般的な文化の流れとともに概観。
単純に読み物としてとても楽しい。
かといって、簡単になりすぎていないのも良い。

「バロック=バッハ」という図式をはっきりと否定しているのも痛快。
(バッハはバッハだからね)

19世紀サロン音楽についてしっかりと取り上げているのも好感。

2006年03月25日

上達の法則(PHP新書)

サブタイトルは「効率のよい努力を科学する」とある。
おそらくカテゴリーは一般書籍だと思ったが、私がギターを教える仕事&演奏する仕事という立場であるので、その点から得るところがとても多かった本である。

まず、何を上達する・・・ということの効用を書いてある。
この部分がとてもいい。つまり、誰でも何かひとつに秀でることによって、その後の人生全てにおいて「自信」がでてくるのだという。
確かに楽器の習得が早い人は、何事も飲み込みがいいような気がする。

その後、ある瞬間に「悟る」感じ・・・だとか、模倣の重要性、質と量の関係・・・それこそ、おそらく何かを習っている人(または教えているならば、だれでも「ああ、そういうことだったのか!」と思わせられることが多い本であることには違いない。

特に長年、何かを習ってきた人には、「あの時の先生の教えはこういう理由があったからなのか!」というふうに思う部分が多いと思う。

つまり、これは私の音楽家、教師の仕事のうえで、経験から学んできたものを理論づけてくれている本である。

「作曲家の発想術」(講談社現代新書)

先日小田原に出張演奏に行った帰り、本屋に立ち寄り暇つぶしに買った本。
作曲家、青島広志の著作。
作曲家という「職業」「仕事」について、面白く書いてあって、とっても暇つぶしには良かった。

もちろん音楽についてもわかりやすく、そして「なるほど!」と思う点もいくつかあり、その点では勉強になった。例えば・・・217ページあたりのくだりは、とっても分かりやすい。
音楽の最小単位は2小節、これを動機、これが2つくっつくと小楽節、この小楽節が2つつくと大楽節・・・これを童謡の詞の仕組みと対比させているあたりは、音楽に詳しくない人でも「なるほど~」と思うに違いない。