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2006年09月22日

ウィーン・フィル 音と響きの秘密(文春新書)

中野雄氏の著書。
おおまかに言ってしまえば、オーケストラと指揮者の関係をウィーン・フィルという世界的オーケストラの発展をもとに解明していく本であるといえる。

オーケストラと指揮者の関係って何?とか、指揮者が何故「音楽家」として認められるの?(ただ棒振っているだけなのに・・・)といって疑問をもっている人にお勧め。

また、オーケストラメンバーがひとりひとり、優秀なソロ奏者でもあるので、そのエピソードも興味深い。

やはり小澤征爾が語られれば、その氏である斉藤秀雄の指導法も語られねばならない。
・・・というふうに、内容はいろいろな軸に膨らんでいく。

日本人と西洋音楽との関わりも触れられているし、ヨーロッパとアメリカの文化の差も語られる。
そういう意味では、とても内容が濃い。

クラシック音楽全般を知りたい人に、とてもお勧め。
この本を軸にして、オケを聞き比べしても良いし、指揮者に興味をもってCDを買ってみてもよいだろう。

2006年09月21日

音楽ライターが、書けなかった話(新潮新書)

神舘和典(コダテ カズノリ)氏の本。
音楽ライターとして多くのミュージシャンの記事を書いてきた筆者の「裏ストーリー」的な内容。
各音楽家の、性格、人間性をクローズアップしている。
読みやすい。電車のなかでさらっと読めた。

扱っている音楽家は、ジャズ、ポピュラー、ロック、Jポップと幅広い。
個人的に、ジャズミュージシャンの項が面白く読めた。

ジョンスコフィールドとマイク・スターンの違い。かたや「紳士」、かたや「アメリカン」・・・。実際に自宅を訪ねていった際のエピソードで、それがよく理解できる。

デヴィット・サンボーンの苦悩・・・を扱った部分も、「ああ、スターも大変だな」と思う。

これらの内容が、筆者が実際に本人に会い、話をしたりした中で語られているから、読みやすいのである。

最後のほうに、筆者本人が語る「音楽ライターという商売」という文章がある。これがまたよろしい。
結局、自分の好きなことを仕事にしたほうがいいのだ。
この点は、私も同意見。

2006年09月17日

バスク語入門(下宮忠雄)

バスク語・・・スペイン北部、カンタブリア海側の独自の言語である。
この本は、一応そのバスク語の入門書であるが、実はバスク文化入門書の色合いのほうが濃い。

だから結構、文法部分はトバシ気味・・・(もちろん概略は分かるようになっています)
バスク地方の民謡が楽譜とともに載っていたり、詩や昔話がてんこもり。

ああ、こういう言葉のこういう文化が「バスク」なのね~と思ってくれれば成功なのである。

ちょっと文章も古い・・・がとりあえず、スペイン文化をふかーく知ろうとする人は、読みましょう。

2006年09月16日

近所がうるさい!(橋本典久)

騒音問題の本である。
近隣の住民の騒音などで悩んでいる人は必読。
それに、われわれ音楽家も必読。意外に知られていない「騒音」の実態・・・。

騒音の正体とはなにか?・・・音楽家であれば毎日練習するだろうから、このあたりの知識を持っておいたほうがいいだろう。

具体的な事例、裁判の結果、騒音の科学的分析、ついでに文化史的な捉え方もしている。
新書版で読みやすい。音楽やる人はとりあえず読んで、自分の出す音に意識的になりましょうね。

2006年09月15日

エル・ディアブロ・スエルト~解き放たれた悪魔(ジョン・ウィリアムス)

巨匠、ジョン・ウィリアムス演奏の南米曲集。
南米ものというと、ライトな感覚を思い浮かべるが、このアルバム収録曲は「アリーリョ・ディアス」レパートリーを中心としたものである。
難アレンジであるが、名アレンジの多いディアス編である。

個人的にこのディアス編楽譜をコンプリートするのが、私のライフワークでもあったので、このアルバムの登場は非常にうれしかった。

来日公演でも、「ああ、あの編曲は本当に弾けるんだ・・・」と、やはりジョンのテクニックに驚嘆。
というわけで、このアルバムは聞き耳はいいが、実はめちゃくちゃに難しいアレンジがほとんど。

ソホの「5つの小品」(名曲中の名曲!)が収録されているのも、なんとも嬉しい。これもディアスの愛想曲であり、やはり、その点においても、ジョン・ウィリアムスが巨匠アリーリョ・ディアスを讃えたアルバムといってもよい。

ディアス自身の録音が入手しづらいのが、残念。

2006年09月14日

レイ・デ・ラ・トーレ(ボッケリーニ ギター五重奏他)

レイ・デ・ラ・トーレの過去録音集成。
幻のボッケリーニ五重奏(名盤!)のほか、アルベニス、グラナドスの定番曲も収録。

マニアなところでは、ニン・クルメル「ミランのテーマによる6つの変奏」とオルボン「プレリュードと踊り」を収録。両者ともこのレイ・デ・ラ・トーレに献呈されている。

オルボンはかつて、現代を代表するギタリスト、マヌエル・バルエコも録音していた。
キューバの音楽の雰囲気を伝える名曲である。ブローウェル以前にも、こうような南米カラーの楽曲を提供していた作曲家がいたことが興味深い。

ボッケリーニは、とにかく名演!
だまされたと思って聴いてみるとよい。
芳醇な弦楽の響きがたまらない。“グラベ・アッサイ”の部分など涙ものである。

“ファンダンゴ”でのトーレのギターの切れも素晴らしい。チェロとギターの低音が絡み合い、重厚なハーモニーが生まれている。

現代的な演奏解釈からすると、ちょっと前時代的な感覚なのだが、これでいいのである。
とにかく、各楽器の特徴がよく出ている。

本当にだまされたと思って、お聴きください。

ちなみに、現代的な演奏を期待するとがっかりするとは思いますが、レイ・デ・ラ・トーレの演奏に感動できない人は、絶対にクラシックギターの音を理解できないのは確かです。


2006年09月13日

インプロヴィゼーション(デレク・ベイリー)

ギタリスト、というよりは即興演奏家として名高いデレク・ベイリー氏の著書。
様々な即興演奏の分野との対話から、得られたものを文章にしている。

インド音楽、教会オルガン音楽、フラメンコ、ジャズなどの『即興』について深く掘り下げている。
結局は音楽とは何か?作曲とは何か?ということを考える作業になってしまう。
楽器とそれを操る身体、そして身体をコントロールする精神・・・これらの関係から、どのような音楽が生まれるのか?ということを自由に考えている本。

大学生の頃、この本を読んで、「ああ、音楽って、いろいろ考えた上で、てきとーにやっていいのね」と思ったが、現在プロになって、おりおり思考の檻から出られないことがたまにある。そんなときは徹底的に考える。いろいろな本を読んだり、考えを整理したり。
結局は、楽器を弾いていると、その思考の檻から脱出できることが多いのである。結局、ぐちゃぐちゃ考えるよりも、実際の音から学ぶものは多い。
もちろん逆も多い。

このあたりの、楽器(音)、身体、精神、のバランスがコントロールできたときに、真の音楽家となれるのかもしれない・・・そんなことを考えてしまう本です。


2006年09月10日

音楽の霊性(ピーター・バスティアン)

読み物として面白い。1994年発行だから、かなり古い本だが、ずっと本屋には売っている。
隠れたベストセラーなのかもしれない。
最近も新装版を見かけた。

音楽のピッチ、リズムの「習得」過程を、自分の経験をもとに記述している。

この本の斬新だった点は「メンタル・ラーニング」を取り上げている点である。
絶対に早く弾けない!という心理を逆手にとり、『絶対に弾ける!』と深層心理に働きかける練習過程を経ることで、技巧的困難を克服する方法である。

現在ちょっとしたブームとなっている(いないか?)『インナーゲーム』理論にも近い考え方である。

そういう意味でも、ちょろちょろっと見返すたびに発見がある本。確かにロングセラーなのが分かる。

2006年09月07日

ギター音楽への招待(高橋功)

それにしても凄い情報量!
けっして新しい本ではないが、シェーンベルグ、ヘンツェ、ルーセル、ミヨー、マリピエロ・・・などなど、かなりの情報量である。(現在のギタリストでも、これらすべての資料を持っている人は少ないのでは?)

クラシックギター音楽について、当時これほどまで資料を集めたとは驚きである。

コンクールの情報などはちょっと古いが、どのようなギタリストを輩出しているのかがわかる。

終わりのほうにある「ギターに貢献した邦人」もリベラルな視点で書かれている。
古賀政男とクラシックギター界との関わりなどは必読。

出版社の資料も貴重。これだけまとまっているのは珍しい。しかもギター関連という意味で。

1972年出版、という本なのに、内容は色あせない。
クラシックギター史の基本書である。

2006年09月06日

ギタリストの余韻(小原安正)

現在の日本ギター界のベースメントを築いた小原安正氏の著書。
「古賀ギターと対決する」など、ギターへの熱い情熱を感じる。
ギターの持つ大衆性と下劣な通俗性を一緒にしないこと!が小原氏の信念であった。
現在では古賀政男作品の価値も純粋に評価されているが、ギターの可能性を信じていた小原氏の情熱を感じることができる。

とにかく、クラシックギターとは戦後どのような発展をしていったかを知るには格好の本。
おそらく、私なんかは、小原安正氏の代から考えると孫レベルに位置しているわけで、実はこのあたりの世代の人の話をまとまって読める本は非常に少ない。

まあ、クラシックギターを弾く人なら、とりあえず購入。この手の本は絶版になると入手困難になりますので・・・。

2006年09月05日

松本隆対談集 『KAZEMACHI CAFE』

作詞家松本隆の対談集。
なんど読んでも、なにか見つかる本。
やはり、松本隆氏はプロ中のプロです。

大瀧氏との対談は凄い!
大滝詠一氏の歌唱法の秘伝公開である。歌詞をすべてローマ字化し、子音と母音を「明暗」で処理していった・・・というくだりは、独特である。どのミュージシャンも独自の歌唱システムを採用しているとは思うが、ここまで考えられるあたり、やはり大滝氏は知性派である。
それを引き出せる松本氏もやはり、知性派。

対談相手によっては、松本氏のプロ作詞家としての厳しい姿も垣間見える。
音楽の仕事とは?ということを知りたい人にもお勧めの本。
やはり、ミュージシャンはみな、『職人』ですね。

2006年09月03日

スペイン・旅のうんちくノート

“スペイン狂”中丸明氏の著作。
ライトで読みやすい。スペイン人の「ふつーの生活」を知るのにはうってつけの本。
表記がペセタなので、若干感覚はつかみにくいかもしれない。

教科書的な内容ではなく、俗世間のカルチャーをトリビア的に解説。
俗語もたくさん登場。
これ一冊でバルにいっても困らない。

ちょっとエッチな情報も充実。なんだかんだいっても、これも「スペイン」ですから・・・。

スペイン旅行に行く前に是非!
お読みください。

2006年09月02日

細野晴臣インタヴュー

細野サウンドの謎・・・と帯に書いてあるが、実は音楽リズム指南書として読むといいかもしれません。
細野氏ほどリズムにこだわるミュージシャンも少ないかもしれません。
「1拍子」理論も説明されています。

YMO後、なんだかわからないことをやっていた時期のことも説明されています。
音楽と自分の対話の作業というのは、実に辛い・・・しかし快感・・・であることが行間から伝わってきます。

あと、この本は、昔出版されていましたが絶版が長く続いていました。これが文庫版で入手できるというのがうれしい!

すべて対話形式なので、読みやすいのも魅力です。
民族音楽入門にも向いています。