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2006年10月29日

オンチは楽器がうまくなる(向谷実著)

カシオペアのキーボーディスト向谷実氏の著作。
音楽上達のコツをエッセイ風に書いている。

やわらかい文体、話し言葉で書いてあるので、わかりやすい。

「演奏姿勢をまねすると上手くなる!」という項では、ザ・フーのピート・タウンシェンドなどを例にとり、ピッキングの角度、腕の使い方などを“姿勢(ギターの構え方)をまねすること”によって近いニュアンスを出すことができる、と語る。

まあ、参考になる話が多い。

そして、なによりもカシオペアのバンド苦労話が読み応えあり。

個人的に、あまりカシオペアは好きではないが、こういう話を読むと、聴きなおしてみてもいいかな?と思う。

2006年10月26日

「芸術力」の磨きかた(PHP新書)

いわずとしれた、林望の本。
なんだか、この人の守備範囲は広い。
でも、読みたびに、なんとなくすらっと読めてしまって、それでいて、それなりに役に立つ。
・・・おそらく、それでいいのだろうね。

芸術とは何か?それを日常の中で見つけていこうというのが、この本の趣旨。
芸術は、生活のなかにとりいれるべきものである!という主張である。

それをアクティブに「遊び」の感覚で取り入れる方法、学びの方法も伝授している。

私が面白かったのは、何故かリンボウ先生の趣味のひとつがクラシックギターだということ。
まあ、楽器習得には基礎練習が大事!という例として取り上げているのですが、ギター習得には音階が重要!と述べているわけです。

ただし、ギターの醍醐味が現在のラミレス(リンボウ先生愛用)から学べるとは思いませんが。
(ラミレス信者の方には申し訳ないが・・・)


この本は、趣味を探している人、また習い事をしていて煮詰まってしまった人にお勧め。
ある意味、ちょっと偏りがありますが、リンボウ先生の意見には「ぶれ」がありません。
まあ、間違ったことは言っていませんし。

芸術関連ビギナーにお勧めの本。

2006年10月10日

パークニング自伝(クリストファー・パークニング著)

「Grace Like A River」が原題。
英語で書かれているが読みやすい。

パークニングといえば、セゴビアの愛弟子として有名。
本人もセゴビアの後継者であると自覚しているのであろう。

というわけで、セゴビアのことがたくさんでてくる。
「セゴビアの教え」が随所に出てきて、ある意味では「弟子から見たセゴビアテクニック覚書」としても読める。

もちろん、パークニング自身がレコーディングや演奏活動において学んだものが、その試行錯誤の過程も含めて書いてあるので、それも参考になった。

残念なのが、ロメロファミリーに最初のギターの手ほどきを受けたのにもかかわらず、それについてほとんど触れていないこと。セレドニオ、またはぺぺの教えがどのようなものであったか?もう少し詳しく書いてあれば、面白かったのに・・・とも思う。

まあ、それにしてもギタリストが読んで、とても参考になる本には違いない。

おまけでCDがついています。日本円で2000円前後なのでお買い得かも。

2006年10月08日

「あがり」を克服する(カトー・ハヴァシュ著)

生徒を教えているという仕事なので、発表会のたびに、「あがり」とは何か?について考える。
ということで、この本はとても参考になり、今でも折にふれて読み返す。

結構付箋がいっぱい張ってあって、「自分でも何度も読んだな~」と思ってしまう一冊。

ヴァイオリン奏者のために書かれた本ですが、指の使い方、難所克服のための方法などは、ギターと共通の部分も多く(肉体面でも、精神面でも)参考になります。

「あがり」という面だけでなく、たとえば「速いパッセージが弾けないという恐れ」という章では、技術面、精神面から具体的な練習法を書いていて、そのままギターなどでも応用できます。

あくまでも「演奏家」が揚がらないための方法を書いている点が好感が持てる本です。
決して心理学者が書いた「理論書」に終わっていないところがミソ。

また、生徒と教師のあり方(依存と自立)についても書いているのも、面白い。
「社会的地位もある大人の生徒が子供がえりしてしまう・・・」というくだりもあって、普段レッスンしている自分からすると、「ある、ある!」と思わず思ってしまうことも書いてある。

「練習の工夫」という章も参考になります。

とりあえず、楽器を練習している人なら持っていて損がない本。教えている人にもお勧め。

2006年10月07日

ヨハン・フォスティエ「ナクソス ギターリサイタル」

ナクソスの新進演奏家リサイタルシリーズ。
このCDのレパートリーがかなりマニアック。

でも、名曲ぞろい。それでも、若い人は買わないだろう。

テデスコ「プラテーロと私」より。→暇な人はセゴビアと比較を。そうすれば、フォスティエ氏の意図がよくわかる。

ポンセ「スペインのフォリアによる変奏とフーガ」→長い!(25分)ですが、これを弾いておけば、ポンセの深みが分かります。フォスティエ氏の演奏は、丁寧なニュアンスで、各変奏の雰囲気を大事にした演奏です。

アセンシオ「賛歌の組曲」→ああ、珍しい。こういう曲をコンクールとかで、弾く人がばんばん出てこないと日本のギター界は駄目になる・・・と思う。スペイン東部を代表する(?)作曲家、ビセンテ・アセンシオの傑作。ドロッとした雰囲気に感じるが、そうはいっても地中海的な「広がり」と「豊穣」を常に感じさせる作品。


テデスコ「悪魔の奇想曲」→名曲中の名曲。中途半端な長さのため(11分弱)、コンクールとかでも弾く人が少ない。残念。

こう考えてみると、意外に、皆知っている曲(&練習している曲)って、コンクール向きの長さだったりしますね。

だから、このCDの収録曲が珍しいというわけですね。

ちなみに、楽器の音はまるで、エレアコ。なんだか、気になったので、ライナーを調べてみたら、ジョージ・ローデン。もう少しクラシックギターらしい楽器を使ったほうがいいと思う。
たぶん、フォスティエ氏の音楽性からいうと、ロマニリョス?

テデスコなんかは、フレタなんかがいいかも。

2006年10月05日

これで納得!よくわかる音楽用語のはなし

こういう本を待っていました!
これで、生徒ひとりひとりに、「とにかく音楽用語は語学辞書をひけ!」という手間が省けます。
(全員買ってくれるといいな~)

実際、この本で、音楽用語の微妙なニュアンスの違いもつかめました。

morendoとsmorzandoの違い・・・とかが、よく理解できる。
日常生活での使い方などでニュアンスが分かるようになっている点もgood!です。

豊富な例文で、そのニュアンスの違いが分かりました・・・。

「andante」を『歩くような速さで』と説明していた自分が恥ずかしい・・・。
(この本を読めば、ちょっと違うニュアンスであると分かります)

音楽を学ぶ人は全員、買いましょう。
(イタリア人以外は)

2006年10月04日

モーツァルト 天才の秘密(文春新書)

帯に天才伝説を覆す画期的評伝・・・とある。
確かに、読んでみると、モーツァルトが、天才ではないように思った。
普通に苦労し、勉強し、いろいろなものを吸収し、それを外へ出す。
そして環境・・・さまざまなものが、モーツァルトを「天才」音楽家へと育てたのだと、分かる。

緻密な時代考証と、現代の脳科学などの知識をもとに、どのようにこの音楽家が成長していったか、研究している。

中野雄氏の著作には、「音楽家とはどのようにしてなるのか?」という視点がいつもある。
そういう意味で、音楽家になりたい人、音楽を勉強している人、全員に役に立つ「真理」が含まれている。

真理、というと堅苦しいのだけれど、まあ、コツというかね。
音楽を聴く、音楽を演奏する、そして、音楽を続ける・・・そのためのコツが随所に散りばめられている。