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2006年11月21日

葦と泥(ブラスコ・イバーニェス)

岩波文庫絶版本。
スペインの作家、ブラスコ・イバーニェスの作品。
人間ドラマを描いたら、超一流のイバーニェス。

イバーニェスは闘牛士を描いた「血と砂」の原作者として有名かもしれない。

この「葦と泥」の舞台はバレンシア。「沼地のイメージ」が、一般の方が思われるスペインのイメージを覆す。
そういう意味で、是非読んでほしい一冊だが・・・。

このようにスペイン=南スペイン(アンダルシア)というイメージを覆すものは一般には好まれない。
画家でいうとアントニオ・ロペスやタピエスもあまり一般には“スペイン性”が感受しにくい。
でも、スペインで暮らしてみると、上記2名の作品には明らかにスペインの空気感が漂っているのが理解できるだろう。

と、話はすこし脱線した。


で、この文庫だが、おそらく岩波絶版のなかでもプレミアが結構ついている。
私が持っているのは1978年版。それ以降記憶が正しければ出ていないはず。

1000円くらいなら出しても損はない。


2006年11月05日

醜聞(アラルコン)

アラルコンの宗教小説。
岩波文庫で上下巻で出ているが、おそらく現在は入手困難。
古本屋でもプレミアがついている場合が多い。
(100均コーナーとかであったらめっけモンですよ)

岩波文庫からでているスペイン作家のものはほとんど全て持っているのが、実は私の自慢。
岩波文庫収集が大学生の頃の趣味でした。

このアラルコンの「醜聞」は内容は、とてもスリリング。
主人公がどんなことをしても神は人を救わない・・・。
運命を変えることは神をしてもできないのである。

宗教小説だが、生々しいくらいの人間の愛憎が描かれている。
読んでいてとても辛くなる。

結局は、「神を信じることができた自分」を受け入れることで精神的な安定を得ることが最終目標であり、神に頼ってはいけないのである。

まあ、そういうキリスト教の根本原理をなんとなく理解することができた作品。
大学生の頃読んで、いたく感銘した。今でも「人生を変えた50冊」といわれれば、この作品は必ずいれるだろう。

2006年09月17日

バスク語入門(下宮忠雄)

バスク語・・・スペイン北部、カンタブリア海側の独自の言語である。
この本は、一応そのバスク語の入門書であるが、実はバスク文化入門書の色合いのほうが濃い。

だから結構、文法部分はトバシ気味・・・(もちろん概略は分かるようになっています)
バスク地方の民謡が楽譜とともに載っていたり、詩や昔話がてんこもり。

ああ、こういう言葉のこういう文化が「バスク」なのね~と思ってくれれば成功なのである。

ちょっと文章も古い・・・がとりあえず、スペイン文化をふかーく知ろうとする人は、読みましょう。

2006年09月03日

スペイン・旅のうんちくノート

“スペイン狂”中丸明氏の著作。
ライトで読みやすい。スペイン人の「ふつーの生活」を知るのにはうってつけの本。
表記がペセタなので、若干感覚はつかみにくいかもしれない。

教科書的な内容ではなく、俗世間のカルチャーをトリビア的に解説。
俗語もたくさん登場。
これ一冊でバルにいっても困らない。

ちょっとエッチな情報も充実。なんだかんだいっても、これも「スペイン」ですから・・・。

スペイン旅行に行く前に是非!
お読みください。

2006年08月31日

エスクァイア日本版「発見、クラシック音楽」

ネイガウス氏の書籍を先日紹介したが、偶然にも雑誌「エスクァイア9月号」にロシアピアニズムの特集が載っていた。
確かに、ロシアのピアニストには、共通した音があると思う。それを解明しようとする試みは、ある意味で無謀だが、しっかりとした取材でなんとなくそのルーツが見えてくる。
やはり、雑誌もあなどれない。700円で、この内容&「特集テーマ」は、買い、である。

古楽についての特集も組まれている。重鎮アーノンクールは当然、そしてジョルディ・サバールも当然登場・・・。
面白いのが、サバール・グループの撥弦楽器担当のロルフ・リズレヴァントが登場していることだ!。
ホプキンソン・スミスの弟子という正統派&もともとジャズ奏者出身・・・という変り種。
インタヴューは必読。ジャズ奏者としてプロの仕事をして、夜中にリュートを弾いていた・・・という若き日の回想・・・バロック音楽とジャズの関連・・・
以上のことが、これほどの実力派奏者が語ると、真実味を帯びる。

古楽器=貴族的・・・という短絡的な見方をすると失敗する。
どちらかというと、民族音楽と共通のものが多く、いわばポピュラー音楽ともいえる。
そんなこともなんとなく理解できる、サヴァール氏のありがたいインタビューもある。

2006年08月24日

プラド美術館の三時間

故、神吉敬三先生の本。わが大学の恩師。
卒論担当で、なぜか研究室で暇をつぶさせて頂いた。
名訳。いまでも時々、原書のにらめっこして、『何故こういう訳になるのか?』参考にしている。
あ!というくらい、訳が上手。
大学のスペイン語訳の授業を思い出す。

単純に、プラド美術館を訪ねる前にさらっと読んでおきたい本。
(おそらく、三時間でプラドは回れないだろうね)