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聴かせる演奏を目指せ!表現法講座

外国語辞書を持っていない音楽家はモグリ?

音楽用語の語感を知る重要さ

音楽家の家に行けば・・・

音楽で仕事している演奏家、研究家で少なくともイタリア語の辞書を持っていない人はおそらく「モグリ」か、 ブラックジャック・レベルの「天才音楽家」としかいうしかありません。または5ヶ国語以上を大学生レベルで 操る超インテリであると考えられます。
楽譜をみると多くの外国語が使われています。特にイタリア語が多いです。と考えられた人はかなり賢い のです。基本的な音楽用語はイタリア語で書かれています。そしてより細かい作曲家による指示もイタリア語で 書かれる事がおおいのです。だからといって、音楽で使う用語は限られているし音楽辞書一冊あれば足りるのでは ないか・・・と考える方もいると思います。が、しかし、やはり語学用の辞書は必要なのです。

語感で理解するために

音楽用語は、たとえば、pと書いてあれば「弱く」、fと書いてあれば「強く」と丸覚えです。 中学校の音楽のテストであればこれでいいのですが、本気で音楽を表現したいのであれば、 それでは不十分です。まず、イタリア語辞書でpianoを弾いてみましょう。さまざまな意味が書いてあるはずです。 その語感を感じ取ってください。ちなみに外国語のある単語のニュアンスを感じとるためには語義を最初 から最後まで読んでみるのがお勧めです。そこから得られる情報をもとに楽譜を見直してみましょう。 つまり「p」と書いてあれば、やさしく柔らかい音で弾かねばならない場合もあれば、ネズミばこそこそと 歩き回る感じでコソコソッと弾かねばならない場合もあるのです。
また、あなたが普段使っている言葉の意味にも敏感になりましょう。例えば>(アクセント記号)が出てくる と、すぐ「特に強く弾く」と思ってしまうのは危険です。アクセントはあくまで「その音を他よりも際立たせ る」ことですから、前後関係によっては別に強く弾かなくてもいい場合もあります。

基本速度記号にも本来の意味があります

このような例は表情記号であれば、割合みな、感覚的にわかるようです。Silenciosoであればこれは「静かに」だな、とかenergicoであれば「エネルギッシュに」だな、とかですね。これをallegroなどにもあてはめて考えて見ましょう。もともとの語義は「陽気に」です。 ある日本人音楽家がイタリアに演奏旅行にでかけ、会場に遅刻しそうなのでタクシーの運ちゃんに「allegro! allegro!」と『急いでくれ!』という意味で叫んだが、運ちゃんは『楽しげに』口笛を吹きながらのんびり運転していたという話は有名です。 ですから、速度を表す用語において第一に理解せねばならないのは、そのイメージです。 以下に主要な速度を表す用語のイメージを書いておきましたので、参考にしてください。
Largo・・・無限に広がっているかに思える大平原や静かな海原などを想像してください。
Adagio・・・ゆったりとくつろいでいる感じです。別荘で揺り椅子に揺られながらパイプでもふ かしているイメージです。
Lento・・・スローモーションの映像をみているようなイメージです。
Andante・・・もともと歩くような速度で、という意味です。昔の人は現代人よりゆったりと歩いていたようです。 それも貴族がゆったりと歩いている感じをイメージしてください。
Moderate・・・「中庸な態度」。何事にも動じず、自分を失わない紳士の立ち居振る舞いを想像してください。
Allegro・・・明るく溌剌とした港町の市場の人々の姿あたりをイメージしてください。
Vivace・・・公園で一心に鬼ごっこに興じている子供たちの姿を想像してみてください。
Presto・・・息をつく暇もないほどのスピード感があります。遊園地のジェットコースターにでも乗った イメージ?
以上、基本速度記号のイメージを私なりに書いてみました。これを参考にあなたも自分のイメージを広げて いってください。もともとのallegroにはメトロノームに表記されているイコール120〜168などという数値 よりも重要な意味があるのはわかっていただけたでしょうか? この曲を陽気な雰囲気で弾いてくれや、という作曲家の意図が重要なのです。もちろん、 楽譜にメトロノームの数値がはっきりと書いている場合はそれをできるだけ遵守しなければなりませんが、 この場合もご注意を!それが作曲者自身によってつけられたものなにか、あとから編集者などによって適当 につけられたものであるのかが重要です。

まとめ〜あなたの先生のレッスン室には語学辞書はありますか?

以上、このあたりまでは、誰でも知っておくべき「常識的な」範囲の話です。音楽家という商売をしていて、 イタリア語の辞書をもっていないのはモグリです。それ以外にもドイツ語、フランス語なども持っておいて 損はありません。別に本格的に「語学」をやるわけではないので、古本屋でかまいません。持ってない人は 買いましょう。アマチュアでも、プロでも辞書は買っておいて損はありません。たとえば、ギターの楽曲で 有名なディアンスはフランス人です。出版譜もフランスからのものが多いので、楽曲の表情などをフランス 語の文章で説明しているものが多いのです。音楽用語ではないので、これは音楽辞典に載っていない場合 も多いのです。ですから、是非フランス語の辞書も買いましょう。その他、古楽をやる方はラテン語辞書を、 スペイン音楽をやる方はスペイン語を・・・ときりがなくなくのでこの辺でやめときます。とにかく自分が弾く 楽曲の生まれた国の辞書は必ず持っておくべきです。
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