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レパートリー拡充講座

楽曲

フランシスコ・ターレガ作曲「前奏曲1番」

作曲家フランシスコ・ターレガの名曲。

ターレガの前奏曲はシンプルながら奥が深いものです。

この前奏曲1番は、地味に感じるかも知れませんが、スラーの連続で下降していくラインや、和声の進行に留意して表現することで、非常に美しい曲へと変化します。この曲をつまらなく演奏するか、または美しく演奏できるかは、どれだけ解釈をしっかりとするかにかかっています。

以下、一番入手しやすいと思われる現代ギター社「ターレガ曲集3前奏曲と練習曲集」版をもとに解説をしていきます。

リズム

この曲は2拍子で書かれています。意外にバランスの悪い拍子です。3拍子とくらべると、つっかかるような演奏をしがちですので、まずは的確に2拍目のアウフタクトを感じながら、しっかりと全体を2拍子で感じることから譜読みをはじめてください。決して、一拍目を重くしないようにすることが大切です。

原則として「2拍子」の2拍目は次の小節の1拍目に解決します。2拍目→1拍というつながりを感じながら全体を弾いてみると和声の進行がつかみやすいと思います。

ポイント(全体)

どのように和声が解決していくかを感じながら、2拍→1拍という単位で見ていくと多くのことが得られます。1段目5小節目1拍表の和音までひとつのつながりと感じられると思います。もちろん、この1段目5小説1拍表でフレーズは途切れません。5小節の旋律がドーファーラードというふうに続くので、この5小節目のドはフレーズの切れ目であり、始まりであると考えると良いでしょう。

続いて1段目5小節から2段目4小節目1拍目表の和音まで、ひとつのまとまりが感じられます。前の部分と比較するとより旋律のつながりが薄れ、より動的な部分になっていることが分かると思います。2拍→1拍の和音の解決も明確になってきます。低音の進行だけ弾いてみることを試してください。非常にリズミックがラインです。このことを意識して演奏するとより立体的な演奏になります。

2段目4小節からも2拍→1拍のペアを感じながら弾いてみてください。面白いのは低音の進行です。ファーミーレ〜、ミーレード#〜、レードーシ〜、というふうに八分2つ+四分1つのリズムを刻んでいます。和声の解決のペア(2拍目→1拍目)を縫うように低音が進行しています。このモチーフは5段目1小節からも登場します。内側へと向かっていくエネルギーが感じられます。非常に印象に残るモチーフですので、この低音を意識して演奏することが重要です。

前の漸次下降していく低音のモチーフに呼応するかのように、3段目2小節からのメロディーも少しずつ下降するだけのものになっています。アクセントがついていますが、この処理をどのようにするかが楽曲のイメージを左右します。

4段目1小節〜6段目1小節1拍目までをひとまとまりに感じられるはずです。そして、この部分が1段目3小節目からの部分に酷似していることに気づけることが大切です。いわば変形した部分です。前奏曲は比較的自由な形式ですので、どちらか主ー従ということもなく、同じリズムパターンを使って、自由に旋律を展開している場合が多いです。旋律のリズムを見ていくと特に違うのは4段2拍目から息が長く八分音符で構成される上行のメロディーがある点です。この部分が8分音符になっていることにより、耐え切れず見切り発車してしまった…というイメージで旋律が展開していく印象を与えます。

4段目6小節の和音の進行と2段目3小節目からの和声進行がまったく同じことにより楽曲全体に統一感を与えている点にも注意してください。その後のフレーズの音は前の部分に出てきたものと同一です。しかし上声と下声の絡み合いがより強調されているように書かれています。存在する音はまったく同じですが、音のつながりを変化させるように解釈せよとの指示です。5段目からは低音を強調すると同時に、旋律のラインも意識することが大切であるということなのです。つまり、5段目1小節2拍目→2小節1拍目のシーファーシ〜というような音のグループを強調せよ、ということです。このような細かい記譜の違いを見逃さないことが楽曲解釈のために大切なことです。

6段目5小節目〜はエンディングの部分です。「(レ)−ドーシーラ」というのが共通の音構成です。そう考えると、この楽曲の冒頭部分の旋律もレードーシーラでした。この時点で、「(レ)ードーシーラ」というのがこの楽曲全体のモチーフであったと考えられます。この「(レ)ードーシーラ」という音の単位があり、その後は自由に音を繋いでいくというのが、おそらくターレガの意図したところだったのではないかと思われます。

最後に部分に登場するオクターブ・ハーモニクスによるフレーズは、4段目2小節目2拍目から始まる譜レースと同一です。このように2回まったく同じ形で繰り返されるフレーズや旋律には常に注意してください。いわば、作曲家のお気に入りフレーズである場合が多く、「これは言いたい!」という主張でもあります。このことが分かると、一回目のフレーズも印象深く表現することが重要であるということがわかります。

表現のポイント@

この曲の冒頭は表現に悩む人が多いと思います。この冒頭がうまく処理できないばっかりに、この曲を投げてしまう人もいるかもしれませんね。しかし、「(レ)−ドーシーラ」という音グループさえ見つかれば、若干のヒントを得たことになります。少しレをたっぷり目に弾いて、レ+ドシラというニュアンスを与えるなどの表現の可能性がみつかるでしょう。この1段目1小節「ドシラ」という音グループと3小節目の低音での「ドシラ」を呼応させるようにアーティキュレーションを工夫すれば、後半との整合性がでてくると思います。

表現のポイントA

3段目2小節からのアクセントを含む下降旋律はどのように表現したらいいのでしょうか?アクセントをただ強く弾けばいいのではありません。ソーファ、ファーミ、ミーレ、レード…という組み合わせで考えるのではなく、ソ、ファーファ、ソーソ、ミーミ、レーレ…という組み合わせで考えてみてください。そうするとこのアクセントが、前に押し出す感じを表現しようとしていることが分かります。つまり、この部分は、3段目の1小節目から考えないといけないということにもなります。つまり、1小節目でソードーレーミと上行でエネルギーを蓄えられた旋律がソまで押し上げられる感じ…そして、そのソまで来たものが前に押し出される方向性を持っているのにもかかわらず、旋律としては下降して相反するところへ持っていかれるという感じ…とでもいうのでしょうか?つまり、このアクセントが意図するものは、燃料不足にもかかわらず、なんとか空を飛び続けようとするプロペラ飛行機が、なんとか息も絶え絶えエンジンをふかしている様子にも似ています。

最後に一言

この曲はとにかくやってみてください。しっかりと分析をしていくと、非常に面白い曲であるとわかりますし、ターレガという作曲家のイメージ力と構成力の素晴らしさに感嘆するはずです。
(2005.9.15)

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